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【コンピューター監視法】 インターネット犯罪の冤罪はすでにあった 「岡崎図書館事件」

Posted by 優兎 on 14.2011 コンピューター監視法

「コンピューター監視法」、衆議院では審議入りからわずか1週間で可決し、参議院でも5日間という短期での採決が懸念されていますが、成立すればサイバー犯罪の捜査において警察に強力な権限が与えられることになります。

犯罪防止の観点からは望ましいのかもしれませんが、その一方で冤罪の危険性も増すことになります。

実際、今から1年ほど前に「岡崎図書館事件」という、サイバー犯罪の冤罪事件がすでに起こっていました。

岡崎市立中央図書館事件 ウィキペディアより http://bit.ly/l0ejDy

2010年3月頃に岡崎市立中央図書館の蔵書検索システムにアクセス障害が発生し、利用者の一人が逮捕された事件である。利用者に攻撃の意図はなく、また、根本的な原因が図書館側のシステムの不具合にあったことから論議を呼んだ。

事件の経緯
2010年3月頃、市民から同図書館のウェブサイトの蔵書検索システムに対し接続が出来ないと苦情があり、その後もウェブサイトの閲覧が困難になる事態が相次いだ。同年4月15日、同図書館が迷惑なアクセスを受けていると愛知県警岡崎署に被害届を提出し、5月25日にアクセスを行っていた男性が蔵書検索システムに高頻度のリクエストを故意に送りつけたとして偽計業務妨害容疑で逮捕された。

男性が実際に行っていたのは、蔵書検索システムの使い勝手に満足しなかったため自身で作成したクローラを実行し、蔵書検索システムから図書情報を取得することであった。

20日間の勾留と取り調べの後、6月14日には男性の業務妨害の強い意図が認められないなどとして起訴猶予処分となったが、専門家や技術者からは長期にわたる勾留の正当性、およびそれ以前に逮捕が必要であったのかが疑問視されている。


この事件に関して、冤罪で逮捕された方(N氏)が警察とのやり取りをネットで公開しており、セキュリティ研究者の高木浩光氏がそれに対してコメントをされていたので、その部分を転載します。(かなり長いので、特に重要と思われる部分のみ抜粋します。実際のインターネット冤罪事件の貴重な記録なので是非お読みください)

警察と検察と裁判所で何があったか 岡崎図書館事件(2の1)より http://bit.ly/isdTZt

5/25 自宅を強制捜査された

7:30頃、妻と食事中、インターホンが鳴った。こんな時間に誰だろう?と思って、インターホンのカメラを覗くと、男が数人いた。驚いてドアを開けると、「○○○○(本人名前)、岡崎図書館のホームページにアクセスしているな。大問題だよ、ちょっと悪質だよ、大変なことになっているよ。」などと警部補Aが言いながら令状を広げ読み上げた。警察官7・8人が上がりこんできた。
強制捜査時にいた警察官:警部補A(愛知県警本部、推定45歳)、警部補B(岡崎署、推定40歳)、技術系警察官C(愛知県警本部、推定35歳)、その他警察官D、E、F、G、H(岡崎署と愛知県警本部、推定30前後)。技術系警察官C以外はIT知識に明るくない。

(略)

自宅前の駐車場に止めてあった自家用車の前で警察官2人に腕をつかまれて写真を撮られた。自宅への移動手段の証拠写真だろうか。近所のおばさんたちにその様子をじっと見られていた。

(略)

5/25 実家から岡崎署へ移動した

10:30頃、実家での強制捜査を終え、岡崎署へ連行された。ワンボックスの最後列に警部補Bと座った。
連行される車の中での会話その1:

本人「何も(連絡)なしに、いきなり強制捜査ですか?サーバがダウンしているなんて、知りませんでした。」

警部補B「(さくらインターネットの)IPアドレス制限の時点で気づくべきだったね。気づかなかった?」

本人「制限なんて知りません。(プロセスの実行時間が長すぎたので)さくらインターネットに(プロセスを)止められたと思って、自分のThinkpadで様子を見ていました。(CPU使用量が多くなると)さくらインターネットはすぐにプロセスを止めますから。」

連行される車の中での会話その2:

本人「(あの程度のアクセス数で)Webサーバがダウンするのはおかしいです。本当にダウンしたんですか?」

警部補B「ダウンした。」

本人「今までにもいくつか(クローリングを)やっていますし、(AmazonやYahoo!などの)Web APIを呼ぶときよりも気をつかったつもりでしたが。」

警部補B「図書館は営利目的の大企業と違って少ない予算で運営されているから、(サーバに)お金をかけられないので(サーバの能力が低い)。」

本人「(えぇー!何を言ってるんだこの人は。ほとんどお金をかけなくても、あの程度のアクセス数は余裕で捌けるのに。まったく分かってない。)〔以降、カギ括弧内の括弧書きは、口にしていないが頭の中で思ったことを表す〕」

本人「(図書館のサーバは)レンタルサーバかなにかの共有サーバで運営されている訳ではないですよね?」

警部補B「そんなことはない。図書館にサーバはある。」

本人「(そういえば、どこかの市役所でプログラムが得意な職員がWebサイトを作ったとかいうニュースがあったな。図書館のWebサイトはログイン機能などなく素人っぽいし、もしかしたら図書館の職員がプログラムを作ってバグを作りこんだのかな?)」

本人「もしかして、プログラムを図書館の人が作ったとか?」

警部補B「いやいや、ちゃんとした業者が作っている。」

本人「(えぇー!どこが作ったのかな?)」

本人「有名な会社ですか?」

警部補B「みんな聞けば分かると思う。」

本人「(おかしいなぁ。自分のプログラムにミスがあったのかな?)」

連行される車の中での会話その3:

本人「やっていることの内容や目的、理由を聞かれずに、いきなり強制捜査されて連れて行かれるのは(いかがなものかと)。」

警部補B「それは調べてみないと分からない。サイバーテロの練習をしているかもしれないし。」

本人「(よくわからんが、警察署に行ってやっていたことを説明すれば、すぐに誤解が解けるだろう。)」


「サイバーテロの練習」というのはどういうことだろうか。
たしかに、昨年あたりから本物のDoS攻撃が頻発して情報セキュリティ界で話題になっていたし、奇遇にもIPAでも、関係有識者を集めた「サービス妨害攻撃対策検討会」が開かれようとしているところだったくらいなので、もしかしたら、警察庁から各都道府県警に「DoS攻撃の摘発に力を入れるように」といったたぐいの号令がかかっていたとか、そういう背景があったのではないかと思ってしまうが、どうなんだろうか。(そういった情報は知らないが。)

5/25 岡崎署で警察の取り調べを受けた

11:30頃からお昼休みを挟んで14:30頃まで、岡崎署で警部補Bによる取り調べが行われた。取り調べは警部補Bが1人で行った。
取り調べの調書は自宅での強制捜査、自宅から実家へ移動中の会話、実家での強制捜査、実家から岡崎署へ移動中の会話を参考にして警部補BがノートPCで作文した。

(略)

調書の完成が近づくと、警部補A、他警察官2・3人が取調室に入ってきた。
取り調べ時の会話1:

警部補A「どうやってプログラムを動かしたんだ?」

本人「どうやってとは(どういう意味)?」

警部補A「ボタンを押すと動くんだろ?」

本人「(強制捜査の時、動かし方を説明したEclipseの実行ボタンのことを言ってるのかな?)」

本人「そうですね。」([注]後日、何方かに教えてもらったことだが、調書には行為の具体的方法が必要らしい。)

取り調べ時の会話2:

警部補A「どれぐらいのスピードでアクセスしたんだ?」

本人「(2ヶ月以上前にサクッと作ったプログラムだし、憶えてないなぁ。)」

本人「よく分かりません。」

警部補A「大体でいいよ。」

本人「1秒に1回ぐらいですかね?でもやっぱり憶えていません。」

警部補A「いいよ、いいよ、約(やく)だから。」

本人「じゃぁ約1秒に1回ぐらいですかね。」([注]後日、何方かに教えてもらったことだが、調書には数値的表現が必要らしい。)

取り調べ時の会話3:
警部補Bが調書を印刷した。
調書には一言も発していない『DOS攻撃をしてしまいました。』の表現があって驚いた。

本人「(DoS攻撃って、久しぶりに聞いたな。まさかDoS攻撃と思われてるのかな?どう考えてもぜんぜん違うのに。しかも、o(オー)が大文字だし。ひょっとして全員素人か?この先ヤバいことになるかも。技術系警察官Cがいるのに間違いを指摘しなかったのかな?おかしいなぁ。)」

本人「DoS攻撃とは違いますが。」

本人「(サーバがダウンしたということなら)結果的に同じ現象になったかもしれませんが。」

警部補A「そうだよね、結果的に。結果的に。」

警部補Bが調書を修正した。

逮捕前取り調べ調書(本人覚え)
「私は4月2日から4月15日にかけて岡崎市立中央図書館のホームページに自作のプログラムを使って自宅ほか1カ所から約33,000回アクセスしました。そのプログラムはボタンを1回押すと自動的に新刊図書ページのデータを取得するために約1秒間に1回のリクエストを送信するものでした。結果的にDOS攻撃になってしまいました。業務を妨害しました。迷惑をかけた責任は償いたいと思います。」

「DOS攻撃」「業務を妨害しました。」「迷惑をかけた責任は償いたいと思います。」など言った憶えはない。

「DOS攻撃」という言葉には引っ掛かったが、表現を「DOS攻撃をしてしまいました。」から「結果的にDOS攻撃になってしまいました。」に変更してもらったので(『結果的にDOS攻撃になってしまった。』という一文は悪意も故意もないことを示していると考えていた)、この調書にサインした。

調書にサインした理由:
「結果としての現象は正しかった」
「2ヶ月前に作成したプログラムの内容をよく憶えていなかったので、強く否定できなかった」
「早朝からの強制捜査で気が動転していて、自分の置かれている状況を冷静に把握することができなかった」
「図書館に被害が出ていて申し訳なく思い、言われたことを認めないことができなかった」
「素直に謝ればすぐに帰れると思った」
「合法な利用をしていると考えていたので、まさか逮捕されるとは思わなかった」「法律、刑法・刑事訴訟法に無知だった」
「『結果的にDOS攻撃になってしまった。』という一文は悪意も故意もないことを示していると考えていた」
「技術系警察官Cがプログラムを解析しているので、すぐに疑いが晴れると思った」

偽計業務妨害罪について、構成要件について、故意について、などの説明はなかった。法律に詳しくなかったので、自分がどんな罪で容疑をかけられているのか理解できなかった。


N氏によると、取り調べは警部補Bが1人ですることが多かったとのことで、この警部補Bは、優しい語り口の人だったとのこと。たしかに、私も6月下旬に岡崎署に電話で取材をかけたとき、電話に対応してくださったK警部補(=警部補B)は、とても優しい語り口の人だった。まさか、そういう電話に、直接捜査を担当した方が対応してくださるとは思っていなかったので、そのときはあまり深く聞き出すことをしなかったのが、今となっては悔やまれるところ。

6/4 検察庁で検察の取り調べを受けた

逮捕翌日の検察調べ時とは別の検察官が取り調べを行った。この日は調書を作らなかった。
主張したことは次の4点

1. シリアルアクセスなので図書館サーバの負荷は限定的(時間あたりの負荷は高々1リクエスト分である)であり、自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するとは思わなかったし、サーバにエラーが発生したことに気付かなかった、
2. レスポンスエラーをハンドリングせずに単にスキップしていたのでサーバのエラーに気付かなかった、
3. 図書館サーバ側にデータベース接続を解放していない不具合の可能性がある、
4. 一日約2,000回のアクセスは常識の範囲内である。

6/7 (警察)岡崎署で実況見分した

岡崎署の一室で実況見分を行った。押収されていたThinkpadを使って、プログラムの作動方法を説明した。また、PC内データベースの確認方法も説明した。
実況見分の時にいた警察官:警部補A、警部補B、技術系警察官C、その他警察官D、I
警部補Aと技術系警察官Cの会話:

警部補A「それ(図書館サーバ?)、こっちに持ってこれないか?」

技術系警察官C「セキュリティの関係で無理では?(図書館が拒否するのでは?)」

警部補A「中身だけでも(持ってこれないか?)どうすれば持ってこれる?」

技術系警察官C「ハードディスクを使えばできます。」

警部補A「それ(HDD)、いくらするの?」

6/9 (警察)Thinkpadで再現実験した

Thinkpadで再現実験を行った模様(PC内データベースで6月9日のデータを確認)。再現実験は技術系警察官Cが行ったそうだ。実際に図書館にアクセスして、データベースにデータが数件取得できたところでプログラムを中止し、被害が出るところ(HTTP500エラー発生)まではやらなかったようだ。

何のための再現実験だったのだろうか。ただ動くということを念のため確かめたというだけなのか。

6/10 検察庁で検察の取り調べを受けた

6月4日と同じ検察官が取り調べを行った。主張したことは次の6点
1. シリアルアクセスなので図書館サーバの負荷は限定的(時間あたりの負荷は高々1リクエスト分である)であり、自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するとは思わなかった、
2. レスポンスエラーをハンドリングせずに単にスキップしていたのでサーバのエラーに気付かなかった、
3. あのサーバ構成なのに2,000回のアクセスでサーバエラーは考えられないので、図書館サーバ側にデータベース接続を解放していない不具合の可能性がある、
4. 一日約2,000回のアクセスは常識の範囲内である、
5. DoS攻撃とは目的と動きが異なる、
6. 負荷対策を行っていた。

検察官との会話1:

本人「あの(方式の)アクセスでサーバがエラーを発生するとは(普通)思いませんよ?」

検察官「でもプロなんだからそれぐらい気付かないの?」

本人「いやいや(予想できません)。リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信するのでサーバにかける負荷は高々1リクエスト分です。だから自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するはずはないと考えますよ、普通。」

検察官「でも君が何回もアクセスしたから問題が起きたわけでしょ。」

本人「それは図書館のサーバの不具合が原因ですよ。」

検察官「・・・」

検察官「でも他の利用者はそんなことする(プログラムを使ったアクセス)と思う?」

検察官との会話2:

本人「サーバは同時にリクエストされるのが一番(負荷がかかって)困るんです。例えばT社さんの社内システムを作った場合、お昼休みが終わる頃、急にサーバにリクエストが増えることがあるんですけど。そこで閲覧が遅いと苦情があった場合、ベンダーは対策を考えます、とか言うんですけど。なぜ今回は(高々1リクエスト分しか負荷をかけていない)利用者である私を訴えることになっちゃうんですか?ベンダーは不具合の原因を調べてないでしょ。」

検察官「・・・」

取り調べ調書(本人覚え)
「私は岡崎市立中央図書館のホームページにアクセスするプログラムを使って、新着図書のデータベースを作成した。Web サーバからの応答を受信した後、次のリクエストを送信していたので、負荷は高々1リクエスト分であった。Webサーバはデータベースサーバとの接続を解放していないため、新たにリクエストを受け付けた時、データベースサーバとの接続が不可能になりエラーを発生した。」

(略)


ここがキモだと思うが、どうしてこれで故意があったことになってしまうのか、謎だ。検察は結局、これだけのことしかしていないっぽい。

6/14 不起訴で釈放された

朝、釈放されると連絡があった。留置場の刑務官によると、通常どうなる予定か伝わってくるものだが、今回は当日まで分からなかったそうだ。

警察官との会話1:

警部補A「君は人に迷惑をかけて罪を犯したけど、自分のプログラムのミスを認め、反省しているので、検察が起訴猶予にしてくれたよ。

本人「(プログラムのミス?やっと、図書館のプログラムを解析してくれたのかな?ベンダーがプログラムのミスを認めたのかな?)」

本人「プログラムとは?図書館のプログラムですか?私のプログラムですか?」

警部補A「君の(プログラム)。」

警察官との会話2:

本人「起訴猶予ってどういうものですか?」

警部補B「不起訴には…その中で最も起訴に近い処分。新に証拠が見つかった場合などは起訴されることがある。」

本人「その起訴されるという期限(時効みたいなもの)はありますか?」

警部補B「期限はないが、基本的にはこれで終わり。」

警部補A「事件には警察止まりとか検察止まりとかある。今回は検察止まりってやつだ。」

警察官との会話3:

警部補A「図書館には(謝りに)行かなくていいから」

本人「・・・」

警部補A「本人は十分に反省していて、『(図書館に)謝りに行きたい』と言っているけど、『俺が代わりに(図書館に)伝えておいてやるから、行かなくていいよ』と本人に言って行かないようにさせたと、図書館には言っておくから。」

本人「ありがとうございます。」

警部補A「図書館には行かなくていいからね」
([注]10月18日、図書館の方に聞いて分かったことだが警部補Aからそのような話は聞いていないそうだ。今になって思えば、警部補Aはこのときどういうつもりだったのかと不審を感じる。)

釈放後、銭湯ですっきりしてから、岡崎市立中央図書館へ謝罪に行こうと思っていた。どうしてこうなってしまったのか知りたかったし、ベンダーはどこなのかなどの情報を集めたかった。しかし、行かなくていいと言われたので、いまは行かない方が良いのかな?と図書館へ行くのは保留した。(銭湯は岡崎署から検察庁へ移送されるマイクロバスからいつも見ていて、釈放後直ぐに行くと決めていた。)

(略)

「君のプログラムのミス」というのならそれは過失であるわけで、過失犯のない業務妨害罪容疑で、「君は罪を犯した」というのはどういうことなのか?


この警部補Aは、私が最初に岡崎署に電話したときに対応してくれたO警部補(7月10日の日記に書いた件)であり、あのときに、「業務妨害罪は、過失罰の規定はあるんでしたかね」という私の問いに「ないですね」と即答し、私の言い分に対してハキハキと「はい」と答えていたのに、これはいったいどういうことなのか。

今からこのO警部補の話を聞こうとしても、たぶん願いは叶わないだろう。


検察は何を根拠に犯罪と判断したか 岡崎図書館事件(14)より 
http://bit.ly/kWOSH9

N氏が、自分がなぜ起訴猶予に(嫌疑なしでなく)されたのか、10月に検察庁に聞きに行ってきたとのことで、librahack.jp にその報告が出た。

故意を認定した理由はこういうことのようです。

コンピュータに詳しい技術者なので、リクエストを大量に送りつけたら、図書館のサーバに影響が出ることを予想できた。事実、まったく予想しなかった訳ではなく、少しは影響が出ることを予想していたはずだ。それなのに、リクエストを大量に送りつけたので、「故意があった」ものと判断した。

「なぜ嫌疑不十分ではなく、起訴猶予としたか?」と問い質したの対し、検察は、

影響が出ることをまったく予想しなかった訳ではなかったから。

と回答。さらに「それは過失になりませんか?」との問いに対し、検察は、

影響が出ることをまったく予想しなかった訳ではなかったから、過失ではなく故意が認定される。
(検察庁で聞いてきました, Librahack:容疑者から見た岡崎図書館事件, 2010年12月17日)


との回答だったという。

(中略)

気になるのが、「影響」と「まったく」という言葉が使われた点である。
「サーバに障害が出る」とか「サーバが落ちる」といった表現を使ってもいいはずのところに、「影響」という最も弱い表現があえて使われている。その結果、この回答の内容は「サーバに何らかの影響が出る」という広範囲の事態に認識の対象が拡大している。
同様に、「まったく」という言葉は、なくてもよいはずのところにあえて「まったく」と入れられたものだろう。検察はさすがに嘘は言えないのだろうと思う。

しかしこれ、普通の役所では通用しそうな文面であるにしても、正義を実現する検察において、こんな理屈が成り立つものなのだろうか。何らかの影響を何かしらの予感として心にいだいていたら、故意によるものであると?

では、なぜ、「影響が出る」ことをN氏が何かしら予想していたと、検察官はみなしたのだろうか。私はこの話を聞いて次のように感じた。

N氏は、警察と検察の取り調べで、サーバ側に不具合が存在する可能性を一所懸命説明したという。
先日公開された「Librahackメモ」には、「図書館サーバにデータベース接続が解放されない不具合があると考えられる」と主張して、それをベンダーに確認するよう何度も求めたことが記されている。
N氏によると、図書館サーバ内でエラーが発生する仕組みを事細かく説明したそうだ。そのことが、担当した検察官の目には、「サーバでエラーが発生する可能性をよく知っている」と映ったのではないか。

いったいどうしろというのか!! N氏はまさに正直者なのだと思う。それぞれの時点で、技術者として正直に、技術のことがわからない警察官や検察官に技術のことを説明したつもりだった。それなのに、そのことがかえって犯罪扱いする理由にされてしまったというのか。正直者が馬鹿を見るとはこのことだ。

(中略)

結局これは、本当に最初から落合洋司弁護士がおっしゃっていた通り、単に、

起訴猶予処分というのは、建前上は、犯罪事実が認定できた上で諸般の事情により起訴はしない、というものですが、本来は嫌疑不十分であっても、
捜査機関の都合で起訴猶予になっている場合があって(警察によっては嫌疑不十分ではメンツがつぶれるから起訴猶予にしてくれと検察庁に泣きつくところもあります)、起訴猶予だから犯罪事実は認定されたんだな、と見ると間違うことがあります。

ということなんだろう。7月の「技術屋と法律屋の座談会」でも、落合弁護士は「嫌疑不十分は裁定書に理由などをかなり書かなくてはならないので、その手間が少ない起訴猶予にしようとする傾向はあるかもしれない」とも発言されていた。

(中略)

N氏は、今回の報告で、「どうすればよかったのか」として、次のように書いている。

検察官に認めてもらうにはどうすればよかったのか?

私は法律を知らず、刑事事件における「故意性」「過失罰」など重要なことの意味を理解していませんでした。

今思えば、取り調べの時に行うべきだったのは、故意の否定です。故意を否定するために最も受け入れやすい話をすべきでした。

具体的には、まず検察官が誤解している「大量に」の認識を改めてもらう、つまり検察官の「大量に」の基準が適切でないことを指摘し、この「大量に」は Webの世界では常識的なものだと認識を合わせておく必要がありました。その上で、図書館のサーバに影響が出ることを予想できなかったと認めてもらうことでした。

ところが、故意の否定を明確な目標にせず、図書館のサーバに不具合があることだけを主張してしまったため、故意がなかったことを認めてもらえなかったようです。
(検察庁で聞いてきました, Librahack:容疑者から見た岡崎図書館事件, 2010年12月17日)

(中略)

故意がなかったことを説明するには、自分のやっていた行為がごく普通のものであり、それによって通常サーバ側に障害が出ることはないと主張するわけで、実際、N氏は取り調べでそのように主張しているわけだが、それを被疑者本人が言ったところで信用されないのだろう。相手は業界の相場観を知らないわけだから、何か客観的な事実でもってそれを裏付けるしかない。

その一つが、サーバ側の欠陥の存在だったのだと思う。
何のためにサーバ側の欠陥を明らかにするのか、客観的な業界相場観の根拠として必要なのだということを、警察官や検察官に説明、説得する必要があったのかもしれない。

それは並大抵の人では不可能だろう。プロである警察や検察がそれを理解しておくのが道理ではないか。

~~~~~~~~~~

このようにサイバー犯罪にまつわる冤罪の実態が明らかにされたわけですが、この事件の最大のポイントは、

1.犯罪の事実はなかったにもかかわらず、事前の連絡もなく強制家宅捜索を受け、逮捕され、長期にわたる勾留をされたこと。

2.N氏の行為には違法性はなかったにもかかわらず、違法性があったと認定されていること。

3.障害を起こすことについて故意はなかったにもかかわらず、何らかの影響を予感しただけで故意があったと認定されていること。

などだと思います。

コンピューターの不具合の原因というのは色々考えられるだけでなく、故意や目的があったかどうかという内心の問題の比重も大きいため、あいまいな犯罪構成要件のまま法律ができてしまえば、プログラマーなどIT関係者にとっては常に冤罪の危険性と隣り合わせにさせられることになります。

かなり急いだ採決が予定されていると言われていますが、すでに冤罪が発生しているサイバー犯罪の法制化を、指摘されている多数の問題点を残したまま拙速に成立させることはぜひとも避けたいところです。

岡崎図書館事件については、高木氏のHPで複数回にわたり詳しく取り上げています。
コンピューター監視法についても詳しく書かれているので、問題点を詳しく知りたい方には最適だと思います。
今のままだと、条文の解釈次第で捜査の対象がかなり広がる恐れがあることが分かります。

高木浩光@自宅の日記 http://bit.ly/iCNvwE

関連記事抜粋
 ↓
不正指令電磁的記録の論点、落穂拾い 
http://bit.ly/mHPZLj
ウイルス罪法案、どうしてこうなった
http://bit.ly/lJ3nGz
今井猛嘉参考人曰く「
バグが重大なら可罰的違法性を超える程度の違法性がある」
http://bit.ly/mi0BSj
 ウイルス罪について法務省へ心からのお願いです
http://bit.ly/ixc4ro
ウイルス罪法案、バグ放置が提供罪に該当する事態は「ある」
と法務省見解
http://bit.ly/irKCyT 
やはり起きていた 刑事的萎縮効果による技術停滞 
http://bit.ly/iVGzt1

このまま進むと訪れる未来 http://bit.ly/kkUlGU
 ↑
このページでは、このまま法案が成立すると実際に起こり得るであろう事件をシミュレーションしています。フリーソフトを提供するサイトは次々と閉鎖されていき、2019年には日本のフリーソフト文化はほぼ消滅すると結ばれています。
岡崎事件をモデルにしているようですが、前例があるだけに作り話では済まされないと思います。
 
こちらの記事ではこの法案について意見を提出する際の連絡先や、意見の例を掲載しています。
拙速な審議で危険性を残したまま成立させないよう、意見提出にご協力をお願いいたします。
 ↓
コンピューター監視法、審議入りからわずか1週間で衆院本会議を通過 舞台は参議院へ (反対意見提出のお願い 抗議先と意見例あり) http://bit.ly/iTkn6q



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